文字ではない方法で伝える、絵ならではのメッセージ。。。
絵だからこそ「伝わる」メッセージを受け取って帰ってきた。

ひさびさに「絵」の威力を感じた展覧会だった。

印刷や画像では出せない色合いと筆感。
水彩も、パステルも、アクリルも、油絵もその画材でこそ現せる世界がある。
見る側に強烈なメッセージを与える作品は、作者の人生・心にある強い想いがあってこそだと改めて思った。

昔、ピカソの青年時代の絵(後年の突き抜けた画風になる前の人物・風景画)の展覧会に行って、朝焼けの絵を見たとき、絵から醸し出される悲しさに心が締め付けられた事がある。
その絵のいきさつを絵を見た後で知ったのだが、ピカソの親しい友人が自殺をした直後に描いた作品だった。
美しい街並みに一日の始まりである朝日が差し込み始める時を描いた静謐な絵なのに、
何かが終わったような、言葉にできない孤独が見る側に伝わってくる絵だった。

その時に初めて
平面の絵に立体的メッセージ(感情)があることを体験した。
それ以来、絵は実際、その絵の前に立って見るべきだと思うようになった。

留めておきたい、瞬間を絵に描く事
言葉に出来ない思いを描く事、
作品を描く時の作家の心が、何を見て何を考えて、何を伝えたいのか絵に現れるから面白い。

今まで、いろんな展覧会に行って
作品を見る時、どんな思いでどんなメッセージを現したくて描いたのだろうかと
絵の前に立つごとに思うが、
心に感銘を受けた作品を思い出すと、
やはり「見えない想い」を「見える形」にするものが芸術であり、
芸術は目に見えない神様が下さったものだと改めて思う。

ヤシの木や松の木の抽象画の作品がチョン・ミョンソク先生には多数ある。
先生の故郷、月明洞にある構想美術館で先生の絵を直接見たことがあるが、
先生の絵からは、とても生命力を感じるというか、躍動感があるというか、祈りに似た切実な気迫。
強烈な集中力、精神力で描いているのを感じる。

先生の描く絵は、神様から学んだことや、
ご自身の人生を通しての悟りや、祈りのような思いが詰まった作品、題材が先生ならではの作品群。
その絵から「生きていく力」をもらう体験をしたことを思い出す。

芸術の秋、心に投げかけてくる「絵の力」を機会がある方は、ぜひ感じてほしいと思う。